おわかれをした(にっき)
おやすみ、私のかわいいきみ。
最初に言いたい。シュナウザーを可愛いと思ったことは無かった。
そもそも私はテリアのお顔が好きだった。
おじいちゃんみたいな犬って思ってた(マルモが流行る前だった)。
お母さんが千葉で買ってきた犬。それも3匹目。お母さんも気に入るとすぐ増やしちゃう人だった。親子だなと思った。まーた犬か。と思った。
初めて飛脚便でやってきた日、上2匹とは違ってビロードみたいな毛艶に驚いた。シュナウザーというか、テリアみたいな顔をしていた。
なんて可愛いんだろう。驚いた。驚きの手のひらクルーである。
名前を付けていいよと言われた。その日青柳ういろうを買ったから「うい」と付けた。
見よこのふてぶてしさ。姉を枕にしている。
3匹揃っていた頃。
お母さんのなんやかんやで一緒に暮らさなかった期間は2年位。だから多分9年位の付き合い。姉の都合も有り、引っ越して今の家で一緒に住んで4年あまり。この子はこの夏に11才になっていた。
こんなに長い期間1匹の動物と一緒に居たことがなかった。君がいる限り此処に居なきゃね、と笑っていた。一緒に寝ることが当たり前だった。真っ黒の自慢の毛が、少し薄い色に変わったのを寂しいと思っていた。
いつもいつも元気過ぎて本当に年になるのか心配していたくらいなんだけれど。
28日の朝から急に元気がなくなって歩かなくなった。食いしん坊過ぎる彼女がご飯を食べないなんて初めてだった。
30日、昼過ぎに家族からの電話。痙攣してると言われ慌てて早退して家に帰り、
抱えて名前を呼んでぴくぴくしているのを見守っていた。
13時9分、呆気なく息を引き取った。家に戻ってきて、5分後くらいのことだった。
皆に、待っててくれたんだねと言われた。
そんなの待っててくれなくていい。
自分でもなんとなく分かってることを人に言われて苦しくて泣いた。
私はずっと君を上手に愛せていたか、心配だった。
お母さんの代わりに良い飼い主が出来てたかな。どうだった?
一緒にずっと居てくれて、泣いてる時は傍に居てくれた。君だけだった。
毎日毎晩お見送りしてお出迎えしてたのは私だけだったんだってね。泣いちゃったよ。言ってよ。そんなの聞いてないよ。
最近帰ってくる度盛大なお出迎えに玄関で二人で寝転んで感動の再会ごっこしてたけど、出来なくなっちゃったね。
ずっと信じてくれた。愛してくれた。
ご飯を食べてる時は必ず隣りにいてくれた。いやもちろん、自分がおこぼれ欲しいからだけどね。私これから、一人でご飯食べるの寂しいんだけどどうしてくれるのさ。ここ数日寂しくてしょうがなかったよ。
少しだけ寝やすいベッドも、冷蔵庫に行く度付いてくる足音も無くて、見えないから探すけど居ないんだって思い出して気付いたら泣いてるよ。どうしてくれるんだ。
最近毎日ご飯が涙でしょっぱい。
不思議なもので、ソファが軋んだり、いつも居た辺りに何か居るような気がしたり。
私は霊感なんて無いしスピリチュアルでも無いけど、「居るんだなあ…」って呑気だから思ってるよ。心配してくれてる?ごめんね。でもまだ寂しいよ。
それでもやっぱ、結局ありがとうしか出て来ないや。
助手席に箱を載せて、最後のドライブをした。晴れ犬なんて呼ばれてる通り、びっくりするくらいいい天気だった。
眠っているみたいな顔をしていた。冷たい肉球を握った。
いつもこちらを見る顔が、すんやりと眠っていた。
葬儀が今さっき終わりました。
またいつか会おうね。待っててくれるなら待っててね。
生まれ変わって誰か違う人に愛してもらっても良いんだからね。
好きに生きなさい。怒らないよ。愛してるよ。
大好きだよ、だから、ゆっくりおやすみね。
追記
11/2 9:52 火葬されたと連絡が来た。外は雨が降っている。