インフルエンザでなきゃ恋

片側にはにくしみ、もう片側には愛がつまってるの

剽窃される美しさ(舞台Kappa)

2021年6/5(土) ステラボール 
空想科学劇『Kappa』~芥川龍之介『河童』より~ を観てきました。
 
メモ。
・初日の幕が開いたぞ~~~~!!!!!!
・次書く時にはまた変わってるだろうからとりあえず初見だけ。
 
 
 
 
 

 
 
 
 

ガイドライン

 

kappa-stage.com
 

びっくりした。今年初東京!(1/1は朝いただけなのでカウントしない)お久しぶりマイホーム!半年ぶり!土曜初日なので舞台行って帰るだけの日帰りに。
 
何より蟹より牡蠣より
 


 
こんなに喜んでる人の初日を観られる幸福に頭がパンパンになっちまったい。始まる前からピーク。可愛すぎて口の中で大騒ぎしてたら昼になってた。時間泥棒だった。

 
 
 

全体感想

 
頭良くなってから出直しな!!!とグーパンされてる気分。
のっけから繰り返されるフレーズに気が狂いかける。吐きそうだなこれ、と困惑した頃主人公も発狂しており良かった。
穴に落ちてからの二十三号を翻弄する河童共は自由で楽しそうで無責任、愉快な顔をして人間の常識に囚われず倫理観こそ人とは違えどある意味「正しく」生きていて面白いなあと思う。
精神世界の話が実はそこまで得意ではなく、あまりにも自由奔放な皆さんに胸焼けがしたのもまた事実。苛ついたら負けなので途中から
 
この人たちはムーミン谷の生き物。
 
と思ってムーミン見てる気持ちで対応してました。ムーミンかわいい。
固定概念から解き放たれていく、であり、自分の思想を確立していく、であり。最たるものは「当たり前とは逆さまにすれば可笑しいもの」と成り果てる話なのかなと思いつつ見ていた。滅茶苦茶で本能と同居する、自由で胸の痛いムーミン谷。
 
差異として死んだのがマッグだった事、トックは生きていること。
トックが死んだら吐かれる予定だったマッグの「なにしろトック君はわがままだったからね。」が幻となってしまったこと。ラップに劣等感を感じていたトックがマッグに皮肉を言うなんて。なんだ?!なんだなんだ!?なんだー?!?!?!だから余計混乱したんだなと理解した。
 
芥川龍之介の頭の中どうなってんだろうなあという気持ちに同居する、制圧された当時の思想だったり鬱屈だったりが浮かび上がってくるのであー体に合わんなと素直に思う。
ぽえもそうだったけど理解せずに話を進めるとスズカツ作品との共鳴率が滅茶苦茶低くなるんですよね当社比。
案の定掻い摘んでしか読めなかったら体調悪くなるくらい反りが合わなくて、帰りの新幹線で原作を噛みながら記憶を反芻したら腑に落ちる面が多かったので今後鑑賞の予定が有る方は絶対に原作を一度、言葉を一度読み身体に入れることをお勧めする。
スズカツさんは私の非常に弱い部分に棍棒で穴開けるみたいなみねくんを連れてきてしまうので防御の構えをしなければいけなかったのに隙だらけでやられまくりました。無念。再戦希望。
 
何処までも追い掛けてくる四角い穴の空いた箱が連なりまるでゴッホのような俳優たちの手によってもたらされる場面チェンジに「ゔあー!!!!!!!!!!!!!!!」って発狂したくなった、全ては折り重なり、続いていく。
演劇の空間はそこで始まり終わらない、今までとこれからが詰まってて頭がパンクしそうになった。これは経験則。
 
トリプルアンコールで嬉しそうなみねくんが居て、ああ、良かったホッとしたと思った自分が居た。
その笑顔が見られるならもういいやと思ってる自分。乾貞治では有りませんが「理屈じゃない」んだよなあと。理屈でどうにかなるなら言い訳を沢山出来るのに、みねくんの前じゃ全部無に還されてしまう。憎し!!!!!!!!!!!!
 
好きなタイプの演劇ではない。
ただ、それを凌駕する程木ノ本嶺浩が良い。出演陣の後援パワーも凄まじくて、気概を感じてばかりで気圧された。
マチソワしたら血管切れる気がした。どうしようマチソワの予定有る、ツライ。
 
おめでとう初日、おめでとう、なんでもある日。
 
 
 

個別

 

織山尚大さん(第二十三号)

きれいなお顔できれいな声だった。
しなやかで頼りなくて覚束なくて不安そう、怯えていて不確かで繊細なガラスみたいな子に見えた。
ぐにゃんて倒れた後ぬっくと起き上がる様見てそうだジャニーズだと感心した。身体能力が高すぎる。
 
 

青木滉平さん(バッグ)

すっっっっっごい綺麗な子ですね。
ちっちゃいラッパ吹いてんのかな?と思ったらマウスピースだった……伸びやかなトランペットをお吹きになる。
二十三号があやふやな分、凄く鮮明で白黒対比の黒を預かってるの上手かったなぁ……綺麗だなあと遠目に思いながら身が軽くてセットをくるくる回しながら乗っててなんて器用な……とか感心してたけどそもそもジャニーズだった。凄いなあ……いやあ、所作が綺麗過ぎるのよな……と驚いてしまう。
バッグは性の概念が凄く薄べったくて中性的だなあと思った。
 
 

川口龍さん(トック)

川口さんの声の質がみねくんと少し似てて向こう側で聞いてると「どっち喋ってる?!」ってパニックになりがちでした。
トックはあだ名がピエールだと思う
しなやかで自信家、けれど劣等感を抱えててラップが嫌い。かわいいねえ!!!!!
 
 

市川しんぺーさん(ゲエル)

ミカルゲエル。SNS好感度堂々の第一位市川さん。多分みねくん懐いてんな!!!!!!!と思いながら動きの楽しさや声の抑揚にはしゃぐなどした。
ゲエルは何一つ取っても一歩後ろの人って印象です。薄い膜の向こうでゆったり笑って他者(河童)は他者(河童)と割り切ってるというか。もしかしたらゲエルは一番薄情かもしれないなと思ったら面白かった。愉快。
 
 

コング桑田(マッグ)

歌がうめぇ~~~~~~~沸く。
マッグはいつも寂しそうだし、
 

 
 阿呆はいつも彼以外のものを阿呆であると信じてゐる。
 
www.aozora.gr.jp
 

 
私はこれ、客席含むこの場にいる全員への揶揄だったんじゃないかなあ、マッグ本人含め、と思ってる。
 
 
 

未来派マッシュの方(ラップ)(木ノ本嶺浩さん)

 
顔面が大変凶器であらされます。動揺したわ。今回百二十億点をみねくんに進呈しようと心に決めた。
動き一つ、声一つ、笑顔一つ、たぶん今までも見ていたのかもしれないけどあまりにもキラッキラしてて。この人はそうだ、舞台の上でこんなにキラキラ光る人だった……と思い出して涙が出てしまった。顔がいい。
お医者のシーン、シンバルで共鳴する二人のシーン、ラップくんの登場、バタフライ担当ラップくん、不愉快なものを目に入れてうっすら笑い、ヒュンと表情を落とし真顔になるラップくん。みねくんの表情スイッチングに恐れ入る。
原作よりも少し高飛車なラップくんの印象を受ける。これがみねくんが持っていったものなのか、スズカツさんのイメージなのかは分からないんだけど大体スズカツさんはいつも相反するみねくんを連れてきてくれるので新鮮な気持ちで舞台の上で新しいみねくんに出会えることを幸福と呼べば良いかもなと思ってる。音頭取りをするラップくんがね、こう、今まで培ってきたものをフルに利用してるんだなと思ったら愛おしくて狂おしい。
 

ミニヨン

ラップくんがミニヨンの歌を暗証するのが余りにも好き……というか葬式のシーンのラップくん全部好きなんでねちねち書きたいんですが焼香のシーンの心底抜いた感じ、手を合わせてうっすら笑うその危ういお顔。何をとっても木ノ本嶺浩の怪演の片鱗だったと思う。人間の観点で善悪を決めるなら「悪」に寄った表情がとても似合う、自分で自分を染め続けたみねくんが辿り着いたであろうその表情が素晴らしすぎて吠えたくなった。表情筋が力を無くした瞬間の動きが最高過ぎて、うわーーーーー好き!好き!!!って思いました。
陰湿なというよりカラっと悪で、新しいタイプだなと思ったし何処かから拾ってきたであろうそれらが自分にも分かる時、凄い幸福だなと感じる。この人が吸い上げたであろう元を知ってるなんて贅沢だなと思う。どんどんこうして、みねくんは化け物になっていくんだなあと思ったら幸せでしか無い。
 

 
「いざ、立ちて行かん。娑婆界を隔つる谷へ。
 岩むらはこごしく、やま水は清く、
 薬草の花はにほへる谷へ。」
 
www.aozora.gr.jp

 
 

 

 
www.midnightpress.co.jp
 

  
まずラップくんがゲーテのミニヨンを履修済みというところが心底悶える程愛おしかったし格好良かったし予想以上に嫌われてて面白かった。
河童界的にラップくんは美河童男子だと思ってるんだけどどうも歪にヘンテコなのか動きが奇っ怪なのか…?じゃなきゃ毎日雌に追っかけ回されてるんじゃない?と思うんだけど不思議なものですね。
「男は逃げるしか術がない」というのも当時の女性への話なのかなと思うと現代でも埋まらないよなあ格差。今の所息苦しさを感じたことってそんなに無いですけれども。
 
生の声を聞いて、ああ、みねくんだなあと思って愛おしさも有り、複雑さも何故か在った。
君さえ居なければ自由で居られるのかなと思ったりもする時がある。それくらい生きるのが引っ張られてて困ってる。すごい人だなあ、困った人だなあと一人で愉快になっちまった。
 
今日も生きていてくれて、板に立つ選択をしてくれてありがとう。
断捨離の時に胃が冷えて、言葉が出てこなかったことを思い出す。もしかしたらこのままもう見られなくなっちゃうんじゃないかなって思ったことを白状する。*1
だから余計幸せだなあと感動したのかもしれない。気丈で、楽しいと笑ってくれてて本当に良かった、幸せだと思えた。
 
だいぶ消化不良のままなので次回見て上手に噛めたらまた書きたいです。多分取りこぼしがとても多いので。
 
 
 
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おかげさまで久しぶりのステラボールは思ったよりも狭く感じたな。首痛かった。
 
 
 

余分あれそれ

 
起きたのは4時、家を出たのは6時。特急と新幹線に揺られ、10時に東京。
東京にいる友だちのプレゼントを選ぶ、そして買う。
ふらっと上がってフェラガモの財布とコンシェルジュのお姉さんが可愛すぎて来期はフェラガモにしようと心に決める。
 
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果実園でフルーツを詰め込み解散。渡したプレゼント、どうか台風からも彼女を守ってあげて欲しい。
時間が余ったので品川でうかいのクッキーを買って姉の家。お菓子を渡して茶碗を洗って化粧を直させてもらってじゃあねと別れた。うかいのクッキーが滞在時間の内に2種跡形もなく消え去っていた。美味しいようで何より(滞在は30分)
舞台が終わった後フィーバーしながら品川駅ナカでずっと気になってたつくねを買って新幹線に乗り込んだ。うまうまであった。
 
地元に着いたのは23時。靴で足が悲鳴を上げていたので靴を脱いで駅前を歩く不審者。足、凄い痛い(当たり前)
結局カカトを潰したら普通に歩けたのでこの痛みは何だったんだと思いつつ帰宅。日帰り20時間の旅が無事に終わった。日曜日はほぼ寝てた。
夜行がしんどいという意見も分かるんだけど、結局時間も限られ眠れない分私は新幹線移動の方がしんどいのであった。
 
 
半年ぶりの東京、劇場内は大変賑やかでかしましく、そりゃあ減らないよなと愉快にすら思った。
結局自分たちの首を自分で締め続けているのだからどうにもならないなあと思いつつ、それでも席に座り開演を待つ行為は久方ぶりで愛おしかった。座っている時間はむず痒く、ああ、これこれこれだと思った。
東京楽まで、願わくば京都の楽まで無事にこの演目が終えられますようにと願いを込める。
今日も明日も明後日も、きらきら光るみねくんの楽しいが守られますように。
 

*1:なんなら牡蠣トラウマになった